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他の共有者に対する金銭請求

共有不動産において、自分自身が共有不動産に居住しておらず、他の共有者が共有不動産に居住している状況下であっても、原則として明渡しを請求することはできません(参照:他の共有者に対する明渡し請求について)。

そのため、共有状態を保持しつつ、不平等な状況から脱するためには、独占的に共有物を利用している共有者に対して不当利得返還請求を行うことが考えられます。

共有者に対する不当利得返還請求については、最高裁判所平成12年4月7日判決において「共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張・立証がない限り、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできる」とされています。

同様に、東京地方裁判所平成17年3月22日判決においても、「単独占有者(少数持分権者)も他の共有者との協議なくして,自己の持分割合を超えて共有物を単独で使用収益する権原を有するものではなく,多数持分権者は,このような単独占有者に対し,その占有により自己の持分に応じた使用が妨げられているとして,その持分割合に応じた占有部分に係る賃料相当額の不当利得の返還ないし損害賠償金の支払を請求することができる」としています。

よって、「現在共有物を単独で使用している者が、そのような単独使用できる権原を有している場合を除き、自己の持分に応じた使用が妨げられている共有者は,その持分割合に応じた占有部分に係る賃料相当額の不当利得の返還ないし損害賠償金の支払を請求することができる」と考えられます。

なお、共有者間で単独使用に関する合意が既になされていた場合(最高裁判所 平成10年2月26日)には、一部の共有者に単独使用できる権原があると考えられているため、このような場合には共有者に対する不当利得ないし損害賠償の請求は困難といえます。

他の共有者に対する金銭請求に関する裁判例

最高裁判所 平成12年4月7日
 共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、・・・持分に応じた使用が妨げられているとして、・・・持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできる
東京地方裁判所 平成17年3月22日
 単独占有者(少数持分権者)も他の共有者との協議なくして,自己の持分割合を超えて共有物を単独で使用収益する権原を有するものではなく,多数持分権者は,このような単独占有者に対し,その占有により自己の持分に応じた使用が妨げられているとして,その持分割合に応じた占有部分に係る賃料相当額の不当利得の返還ないし損害賠償金の支払を請求することができる
最高裁判所 平成10年2月26日
 共有者は、共有物につき持分に応じた使用をすることができるにとどまり、他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で使用する権原を有するものではない。しかし、共有者間の合意により共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には、右合意により単独使用を認められた共有者は、右合意が変更され、又は共有関係が解消されるまでの間は、共有物を単独で使用することができ、右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わないものと解される。