金銭請求の方法について

当事務所では、「貸したお金を返してくれない」・「契約で決めた金銭が払われない」などの金銭に関するトラブルを取り扱っています。

当然、契約に基づいて金銭を請求することになりますが、金銭請求には実に様々な方法や制度があります。早期に解決するためには、事情に応じて最適な手段を選ぶことが肝要です。

1.交渉

裁判制度を利用せず、相手方との交渉によって支払いを求めることができます。

弁護士の名前で内容証明郵便を出すことも、あくまで交渉の範囲内です。



2.支払督促

正式な裁判(民事訴訟)よりも簡易な手続で、金銭の支払を求めることができる制度です。相手方の居住する地域の簡易裁判所に申立てをすると、裁判所書記官が提出された書類を審査し、支払督促を発します。このとき、相手方の言い分を聞くことはありません。

支払督促に異議がなかった場合、仮執行宣言を求めることができます。仮執行宣言が付された支払督促は「債務名義」となり、相手方が従わない場合には強制執行をすることができます。

便利な手続のようですが、支払督促に相手方が「異議」を出すと民事訴訟に移行するため、裁判沙汰にせずに解決したい、という場合には適切な手段ではありません。また、移行した訴訟を管轄するのは支払督促を出した裁判所となりますから、相手方が遠方に居住している場合には訴訟を進めていく負担が大きくなってしまいます。



3.少額訴訟

60万円以下の金銭請求について、簡易裁判所における1回の審理で終結する裁判手続です。裁判所が原告と被告を呼び出して言い分を聞き、証拠書類を取り調べた上、原則としてその日のうちに判決を下します。通常の民事訴訟の判決が一括支払いを命じるものであるのに対して、少額訴訟の判決では分割支払いや支払いの猶予などが命じられることがあり、柔軟性があるといえます。

この少額訴訟の最大の難点は、60万円を超える金銭請求には利用できないということです。また、少額訴訟は、金額の小さい紛争に限って、少ない費用で迅速に解決するための制度ですので、1回の審理で終結できないような複雑な事件は少額訴訟にはなじみません。



4.民事調停

裁判所が間に入って、当事者同士の話し合いで紛争を解決するための手続です。裁判官と調停委員(一般市民から裁判所が任命します。)が双方の言い分を聞いて、妥協案の提示や説得などをして合意による解決を目指します。裁判所が間に入ることによって冷静に話し合うことができ、解決に結び付くケースは少なくありません。

話し合いの結果、合意ができた場合には調停が成立します。成立した調停の内容が記載された調停調書は「債務名義」となり、相手方が従わない場合には強制執行をすることができます。

話し合いがまとまらず解決が見込まれない場合には、裁判所は調停を打ち切りますが(調停不成立)、適当な解決を示すこともあります(調停に代わる決定)。

民事調停はあくまでも話し合いですから、相手方が応じない場合や、そもそも調停に出頭しない場合には、解決することができません。また、原則として相手方の居住する地域の裁判所に申立てをしなければならないという難点もあります。



5.民事訴訟

当事者同士の話し合いで解決できない場合や、民事調停が不成立となった場合には、裁判所に民事訴訟を提起することを検討します。140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所の管轄です。契約内容などにもよりますが、金銭請求の場合、原告の最寄りの裁判所に訴訟を提起できるケースが多いです。

民事訴訟では、原告と被告がそれぞれ自己に有利な事実を主張し、証拠書類の提出や証人尋問を行った上で、裁判所が判決を下します。判決に不満がある当事者は、簡易裁判所の判決については地方裁判所に、地方裁判所の判決については高等裁判所に控訴をし、再度の審理を求めることができます。



このように、金銭を請求するための制度にはそれぞれメリット・デメリットがあります。どのような手段を選んで、どのようなタイミングで請求すればよいのか、そのためにどのような準備をすればよいかは、なかなか難しいものです。場合によっては、あらかじめ相手方の財産を保全しておく「仮差押え」や、判決などに相手方が従わない場合の「強制執行」を行う必要があります。