相続人がいない場合の対応(相続財産管理人・特別縁故者に対する相続財産分与)について

被相続人に身寄りがなく相続人が誰もいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合には、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができます。

相続財産管理人選任からの手続き

1.相続財産管理人の選任・公告

利害関係人または検察官は、家庭裁判所に相続財産管理人を選任するよう申立てをすることができます。

ただし、相続財産によって相続財産管理人の報酬を確保できるか否かが分からない場合には、申立人が、管理費用に充てるための予納金(数十万円から百万円ほど)を納める必要があります。

相続財産管理人は、選任後直ちに被相続人の財産を調査し、管理を開始します。


2.債権者などによる請求申出のための公告・催告

相続管理人が選任された公告の後、2か月を経過して相続人が現れない場合には、相続財産管理人は、被相続人の債権者などに対して名乗り出るように公告をします。また、相続財産管理人が把握している債権者などがいる場合には、支払いの請求をするように促します。

債権者などから支払の請求がなされると、相続財産管理人は、法律で定められた順序に従って支払いを行います。


3.相続人捜索のための公告

2度目の公告からさらに2か月を経過してもなお、相続人がいるかどうかが明らかでない場合には、相続財産管理人は、相続人を捜すため6か月以上の期間を定めて最後の公告を行います。

この期間内に相続人が名乗り出ない場合には、相続人がいないことが法律的に確定します。これより後に相続人が現れたとしても、財産を相続することができなくなるということです。


4.特別縁故者に対する財産分与の手続

相続人がいないことが確定したにもかかわらず、相続財産が残っている場合には、被相続人と生計を同じくしていた者や被相続人の療養看護に努めた者などの「特別縁故者」が相続財産を取得できる可能性があります。特別縁故者が財産を取得するためには、相続人がいないことが確定してから3か月以内に、家庭裁判所に対して申立てをする必要があります。

家庭裁判所は、申立人に財産を取得させることが相当かどうかを審理して、財産を分与する審判または申立てを却下する審判を下します。


5.財産の国庫帰属

その後、相続財産管理人への報酬が支払われてもなお財産が残っている場合、その財産は国庫に帰属します。

上記のとおり、数十万円から百万円ほどの予納金が必要になる場合があるため、亡くなられた方に十分な財産がない場合には、かなりの経済的な負担となる手続きとなってしまいます。

他方で、亡くなられた方に十分な財産があり、かつ、その方と生計を同じくしていた・療養看護に努めたなどの特別の縁故関係がある場合には、相続財産管理人の選任を申し立てた後に、特別縁故者として財産分与の申し立てをする理由があるといえます。